特表-19124281IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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2019-124281電池用包装材料、その製造方法、及び電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】再公表特許(A1)
(11)【国際公開番号】WO/0
(43)【国際公開日】2019年6月27日
【発行日】2019年12月26日
(54)【発明の名称】電池用包装材料、その製造方法、及び電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/02 20060101AFI20191129BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20191129BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20191129BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20191129BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20191129BHJP
   B32B 27/08 20060101ALI20191129BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20191129BHJP
【FI】
   H01M2/02 K
   H01G11/78
   H01G11/84
   B32B7/022
   B32B27/00 B
   B32B27/08
   B32B27/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
【全頁数】44
【出願番号】特願2019-524466(P2019-524466)
(21)【国際出願番号】PCT/0/0
(22)【国際出願日】2018年12月14日
(31)【優先権主張番号】特願2017-241950(P2017-241950)
(32)【優先日】2017年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-200442(P2018-200442)
(32)【優先日】2018年10月24日
(33)【優先権主張国】JP
(81)【指定国】 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,ST,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,RU,TJ,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,RO,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,KM,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BN,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DJ,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IR,IS,JO,JP,KE,KG,KH,KN,KP,KR,KW,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PA,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SA,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】安田 大佑
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝典
(72)【発明者】
【氏名】山下 力也
【テーマコード(参考)】
4F100
5E078
5H011
【Fターム(参考)】
4F100AB10B
4F100AB33B
4F100AK07C
4F100AK24C
4F100AK24J
4F100AK33
4F100AK41A
4F100AK46D
4F100AK51
4F100AK51G
4F100AL07C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100EC03C
4F100EC182
4F100GB15
4F100GB41
4F100JA04C
4F100JB16C
4F100JD01B
4F100JK01
4F100JL01
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00C
5E078AA01
5E078AA10
5E078AA12
5E078AA14
5E078AA15
5E078HA02
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5E078HA13
5E078HA24
5E078HA25
5E078HA26
5E078HA27
5E078LA08
5H011AA03
5H011AA09
5H011CC02
5H011CC06
5H011CC10
5H011KK01
5H011KK02
5H011KK04
(57)【要約】
少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料。
【請求項2】
前記基材層の厚さが、30〜45μmの範囲内にある、請求項1に記載の電池用包装材料。
【請求項3】
前記熱融着性樹脂層の厚さが、55〜65μmの範囲内にある、請求項1又は2に記載の電池用包装材料。
【請求項4】
前記基材層が、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムとの積層体である、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項5】
下記の測定条件によって測定される限界成形深さが、10mm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
(限界成形深さの測定条件)
長さ150mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをA(mm)、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが発生した最も浅い成形深さにおいて、ピンホールまたはクラックが発生したサンプルの数をB(個)とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料の限界成形深さとする。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/10)×(10−B)
【請求項6】
下記の測定条件によって測定される成形カールが、0mm以上10mm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
(成形カールの測定条件)
長さ200mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPa、成形深さ6mmで冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。成形部Mの位置は、電池用包装材料の長さ方向において、金型によって形成される平面視矩形状の成形部Mと、電池用包装材料の端部Pとの最短距離dが122mmとなり、かつ、電池用包装材料の幅方向において、当該成形部Mと電池用包装材料の両端部との最短距離が34mmとなる位置とする。成形後の電池用包装材料を、成形部の凹部の開口が下向きにして、成形部の凹部が形成されていない箇所の位置Qを基準とし、位置Qから、端部Pまでの垂直方向yの距離の最大値tを、カール(mm)とする。
【請求項7】
下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.55以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【請求項8】
前記熱融着性樹脂層の前記バリア層側の表面の、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項9】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
【請求項10】
少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備える電池用包装材料の製造方法であって、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池用包装材料、その製造方法、及び電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質などの電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていた。
【0003】
一方、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話などの高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0004】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
このような電池用包装材料においては、一般的に、冷間成形により凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に電極や電解液などの電池素子を配し、熱融着性樹脂層同士を熱溶着させることにより、電池用包装材料の内部に電池素子が収容された電池が得られる。しかしながら、このようなフィルム状の包装材料は、金属製の包装材料に比べて薄く、成形時にピンホールやクラックが生じ易いという欠点がある。電池用包装材料にピンホールやクラックが生じた場合には、電解液がバリア層にまで浸透して金属析出物を形成し、その結果、短絡を生じさせることになりかねないため、フィルム状の電池用包装材料には、成形時にピンホールなどが生じ難い特性、即ち優れた成形性を備えさせることは不可欠となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−287971号公報
【特許文献2】特開2013−201027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの大型の電池に対しても、前述のようなフィルム状の積層体により構成された電池用包装材料の使用が検討されている。また、電池の高容量化及び体積エネルギー密度を向上させることが望まれており、その際、電池の成形部の深さを深くし、さらに電池用包装材料の厚さを薄くすることで電池内に収容される電池要素の容量を増やすことが試みられている。しかしながら、成形部の深さを深くすると、成形時に電池用包装材料にピンホールやクラックが生じやすくなるという問題がある。
【0008】
さらに、電池用包装材料の成形によって形成された凹部の周縁部は、成形によってカール(湾曲)して、電池素子の収容や熱融着性樹脂層の熱融着を阻害し、電池の生産効率を低下させる場合がある。特に、車両用電池などの大型電池に使用される電池用包装材料は、サイズが大きくさらに凹部の周縁部の面積も大きくなるため、電池の生産性に与えるカールの影響が、非常に大きいという問題を有している。
【0009】
このような状況下、本発明は、優れた成形性を備え、成形後のカールも効果的に抑制し、さらに体積エネルギー密度の向上を可能とする、電池用包装材料を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、積層体の厚さが195μm以下であり、JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある電池用包装材料は、優れた成形性を備え、成形後のカールも効果的に抑制されることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成したものである。
【0011】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料。
項2. 前記基材層の厚さが、30〜45μmの範囲内にある、項1に記載の電池用包装材料。
項3. 前記熱融着性樹脂層の厚さが、55〜65μmの範囲内にある、項1又は2に記載の電池用包装材料。
項4. 前記基材層が、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムとの積層体である、項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
項5. 下記の測定条件によって測定される限界成形深さが、10mm以上である、項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
(限界成形深さの測定条件)
長さ150mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをA(mm)、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが発生した最も浅い成形深さにおいて、ピンホールまたはクラックが発生したサンプルの数をB(個)とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料の限界成形深さとする。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/10)×(10−B)
項6. 下記の測定条件によって測定される成形カールが、0mm以上10mm以下である、項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
(成形カールの測定条件)
長さ200mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPa、成形深さ6mmで冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。成形部Mの位置は、電池用包装材料の長さ方向において、金型によって形成される平面視矩形状の成形部Mと、電池用包装材料の端部Pとの最短距離dが122mmとなり、かつ、電池用包装材料の幅方向において、当該成形部Mと電池用包装材料の両端部との最短距離が34mmとなる位置とする。成形後の電池用包装材料を、成形部の凹部の開口が下向きにして、成形部の凹部が形成されていない箇所の位置Qを基準とし、位置Qから、端部Pまでの垂直方向yの距離の最大値tを、カール(mm)とする。
項7. 下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.55以上である、項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
項8. 前記熱融着性樹脂層の前記バリア層側の表面の、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下である、項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
項9. 少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
項10. 少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備える電池用包装材料の製造方法であって、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成された電池用包装材料において、優れた成形性を備え、成形後のカールも効果的に抑制される電池用包装材料を提供することができる。また、本発明によれば、当該電池用包装材料を用いた電池を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
図2】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
図3】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
図4】本発明の電池用包装材料の断面構造の一例を示す図である。
図5】成形カールの評価方法を説明するための模式図である。
図6】成形カールの評価方法を説明するための模式図である。
図7】成形カールの評価方法を説明するための模式図である。
図8】シール強度の測定方法を説明するための模式図である。
図9】剛体振り子測定による対数減衰率ΔEの測定方法を説明するための模式図である。
図10】シール強度の測定方法を説明するための模式図である。
図11】示差走査熱量測定における温度差T1及び温度差T2を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電池用包装材料は、少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、積層体の厚さが195μm以下であり、JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、積層体の基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、バリア層の厚さが75〜85μmの範囲内にあることを特徴とする。本発明の電池用包装材料においては、このような構成を備えていることにより、優れた成形性を備え、さらに、成形後のカールも効果的に抑制される。このため、本発明の電池用包装材料は、特に、車両用電池などの大型電池に使用される包装材料として好適に使用することができる。以下、本発明の電池用包装材料について詳述する。
【0015】
なお、本明細書において、数値範囲については、「〜」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2〜15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
【0016】
1.電池用包装材料の積層構造及び物性
本発明の電池用包装材料10は、例えば図1に示すように、基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4をこの順に備える積層体から構成されている。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層側になり、熱融着性樹脂層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱融着性樹脂層4同士が熱融着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。
【0017】
本発明の電池用包装材料は、例えば図2に示すように、基材層1とバリア層3との間に、接着剤層2を備えていてもよい。また、図3に示すように、バリア層3と熱融着性樹脂層4との間に、接着層5を備えていてもよい。さらに、図4に示すように、基材層1の外側(熱融着性樹脂層4とは反対側)には、必要に応じて表面被覆層6を備えていてもよい。
【0018】
本発明の電池用包装材料は、JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、電池用包装材料を構成する積層体の基材層1側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上である。優れた成形性を発揮し、さらに、成形によるカールを効果的に抑制する観点からは、当該突刺し強さは、好ましくは、30〜45N程度、30〜40N程度、35〜45N程度、35〜40N程度が挙げられる。なお、当該積層体の突刺し強さの測定方法は、以下の通りである。
【0019】
<積層体の突刺し強さ>
電池用包装材料を構成する積層体の基材層側からの突刺し強さは、JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定する。具体的には、23±2℃、相対湿度(50±5)%の測定環境において、中央に直径15mmの開口部を有する直径115mmの台と押さえ板で試験片を固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±5mmの速度で突き刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定する。試験片の数は5個であり、その平均値を求める。なお、試験片の数が足りず5個測定できない場合は測定可能な数を測定し、その平均値を求める。
【0020】
本発明の電池用包装材料を構成する積層体の厚さは、195μm以下であれば、特に制限されないが、大型の電池に適用する場合にも、積層体の厚さを可能な限り薄くしつつ、優れた成形性を発揮し、さらに、成形によるカールを効果的に抑制する観点からは、好ましくは、170〜195μm程度、170〜190μm程度、180〜195μm程度、180〜190μm程度、170〜180μm程度が挙げられる。
【0021】
本発明の電池用包装材料は、下記の条件で成形した際の限界成形深さが、10mm以上であることが好ましく、10.5mm以上であることがより好ましく、11mm以上であることがさらに好ましく、12mm以上であることが特に好ましい。なお、当該限界成形深さの上限は、通常、13mm程度である。
【0022】
<限界成形深さの測定条件>
長さ150mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをA(mm)、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが発生した最も浅い成形深さにおいて、ピンホールまたはクラックが発生したサンプルの数をB(個)とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料の限界成形深さとする。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/10)×(10−B)
【0023】
また、本発明の電池用包装材料は、下記の条件で測定される成形カールが、0mm以上10mm以下であることが好ましい。後述の実施例において、成形カールの方向が凹部の方向(垂直方向y1)と同じ(図6の形状)である場合には、成形カールtを正の値として表記し、成形カールの方向が凹部の方向と反対の方向(垂直方向y2)(図7の形状)である場合には、成形カールtを負の値として表記している。本発明の電池用包装材料の成形カールは、正の値として、0mm以上10mm以下であることが好ましい。例えば図7の形状において、成形カールが−5mmとの結果は、成形カールが0mm以上10mmの範囲外となる。
【0024】
成形カールの方向が凹部の方向と反対の方向(垂直方向y2)(図7の形状)である場合、成形カールtの絶対値が0以上10mm以下であっても、成形後の電池素子を収容して周縁部をヒートシールする工程において、シール位置のずれが生じたり、シール後に皺が発生しやすい。従って、本発明の電池用包装材料は、下記の条件で成形カールを測定した場合に、成形カールの方向が凹部の方向(垂直方向y1)と同じであることが好ましい。
【0025】
<成形カールの測定条件>
長さ200mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPa、成形深さ6mmで冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。成形部Mの位置は、電池用包装材料の長さ方向において、金型によって形成される平面視矩形状の成形部Mと、電池用包装材料の端部Pとの最短距離dが122mmとなり、かつ、電池用包装材料の幅方向において、当該成形部Mと電池用包装材料の両端部との最短距離が34mmとなる位置とする。成形後の電池用包装材料を、成形部の凹部の開口が下向きにして、成形部の凹部が形成されていない箇所の位置Qを基準とし、位置Qからから、端部Pまでの垂直方向yの距離の最大値tを、カール(mm)とする。
【0026】
また、本発明の電池用包装材料10は、85℃の環境において、電解液(6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液)に電池用包装材料を72時間接触させた後、前記熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した状態で、熱融着性樹脂層同士を温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間の条件で熱融着させ、当該熱融着させた界面を剥離する際のシール強度が、電解液に接触させなかった場合のシール強度の60%以上(シール強度の保持率が60%以上)であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
【0027】
(シール強度の保持率の測定方法)
以下の方法により測定される電解液接触前のシール強度を基準(100%)として、電解液に接触させた後におけるシール強度の保持率(%)を算出する。
【0028】
<電解液接触前のシール強度の測定>
下記の<電解液接触後のシール強度の測定>において、試験サンプルに電解液を注入しないこと以外は、同様にして引張強度(シール強度)を測定する。熱融着した部分が完全に剥離されるまでの最大引張強度を、電解液接触前のシール強度とする。
【0029】
<電解液接触後のシール強度の測定>
図10の模式図に示すように、電池用包装材料を、幅(x方向)100mm×長さ(z方向)200mmの長方形に裁断して試験サンプルとする(図10a)。試験サンプルを、z方向の中心で折り返して、熱融着性樹脂層側が重なるようにする(図10b)。次に、折り返した試験サンプルのx方向の両端をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)し、開口部Eを1箇所備える袋状に成形する(図10c)。次に、袋状に成形された試験サンプルの開口部Eから電解液(6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である溶液)を6g注入し(図10d)、開口部Eの端部をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)する(図10e)。次に、袋状の試験サンプルの折り返した部分を下にして、温度85℃の環境で所定の保管時間(電解液に接触させる時間であり、72時間など)静置する。次に、試験サンプルの端部を切断して(図10e)、電解液を全て排出する。次に、熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した状態で、試験サンプルの上下面を金属板(7mm幅)で挟み、温度190℃、面圧1.0MPa、時間3秒間の条件で熱融着性樹脂層同士を熱融着させる(図10f)。次に、幅(x方向)15mmでのシール強度が測定できるように、試験サンプルを両刃型サンプルカッターで幅15mmに切りとる(図10f、g)。次に、T字剥離となるようにして、引張試験機を用い、温度25℃の環境で、引張速度300mm/分、剥離角180°、チャック間距離50mmの条件で熱融着した界面を剥離させて、引張強度(シール強度)を測定する(図8)。熱融着した部分が完全に剥離されるまでの最大引張強度を、電解液接触後のシール強度とする。
【0030】
2.電池用包装材料を形成する各層
[基材層1]
本発明の電池用包装材料において、基材層1は最外層側に位置する層である。基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート及びこれらの混合物や共重合物などの樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステルなどが挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66との共重合体、ナイロン6,10、ポリアミドMXD6(ポリメタキシリレンアジパミド)などが挙げられる。
【0031】
基材層1は、1層の樹脂フィルムから形成されていてもよいが、耐ピンホール性や絶縁性を向上させるために、2層以上の樹脂フィルムで形成されていてもよい。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造、ナイロンフィルムを複数層積層させた多層構造、ポリエステルフィルムを複数層積層させた多層構造などが挙げられる。基材層1が多層構造である場合、2軸延伸ナイロンフィルムと2軸延伸ポリエステルフィルムの積層体、2軸延伸ナイロンフィルムを複数積層させた積層体、2軸延伸ポリエステルフィルムを複数積層させた積層体が好ましい。例えば、基材層1を2層の樹脂フィルムから形成する場合、ポリエステル樹脂とポリエステル樹脂を積層する構成、ポリアミド樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成、又はポリエステル樹脂とポリアミド樹脂を積層する構成にすることが好ましく、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートを積層する構成、ナイロンとナイロンを積層する構成、又はポリエチレンテレフタレートとナイロンを積層する構成にすることがより好ましい。また、ポリエステル樹脂は、例えば電解液が表面に付着した際に変色し難いことなどから、当該積層構成においては、ポリエステル樹脂が最外層に位置するように基材層1を積層することが好ましい。基材層1を多層構造とする場合、各層の厚さとして、好ましくは2〜25μm程度が挙げられる。
【0032】
基材層1を多層の樹脂フィルムで形成する場合、2以上の樹脂フィルムは、接着剤又は接着性樹脂などの接着成分を介して積層させればよく、使用される接着成分の種類や量などについては、後述する接着剤層2の場合と同様である。なお、2層以上の樹脂フィルムを積層させる方法としては、特に制限されず、公知方法が採用でき、例えばドライラミネート法、サンドイッチラミネート法などが挙げられ、好ましくはドライラミネート法が挙げられる。ドライラミネート法により積層させる場合には、接着層としてウレタン系接着剤を用いることが好ましい。このとき、接着層の厚さとしては、例えば2〜5μm程度が挙げられる。
【0033】
なお、基材層1が複数層により構成されており、基材層を構成する各層が接着剤などにより(通常、厚さ3μm以下)接着されている場合、接着剤の部分は基材層1には含まれない。
【0034】
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、基材層1の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、後述の熱融着性樹脂層4で例示したものと同じものが挙げられる。
【0035】
基材層1の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、温度24℃、相対湿度60%の環境において、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
【0036】
基材層1の中には、滑剤が含まれていてもよい。また、基材層1の表面に存在する滑剤は、基材層1を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、基材層1の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0037】
基材層1の厚さについては、基材層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、本発明の上記構成を備える電池用包装材料において、優れた成形性と、成形後のカールの抑制をより一層効果的に発揮する観点からは、好ましくは、30〜45μm程度、30〜41μm程度、34〜45μm程度、34〜41μm程度が挙げられる。
【0038】
[接着剤層2]
本発明の電池用包装材料10において、接着剤層2は、基材層1とバリア層3を強固に接着させるために、必要に応じて、これらの間に設けられる層である。
【0039】
接着剤層2は、基材層1とバリア層3とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層2の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。さらに、接着剤層2の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型などのいずれであってもよい。
【0040】
接着剤層2の形成に使用できる接着成分としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、共重合ポリエステルなどのポリエステル系樹脂;ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系樹脂;フェノール樹脂系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、共重合ポリアミドなどのポリアミド系樹脂;ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリカーボネート;尿素樹脂、メラミン樹脂などのアミノ樹脂;クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどのゴム;シリコーン系樹脂などが挙げられる。これらの接着成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの接着成分の中でも、好ましくはポリウレタン系接着剤が挙げられる。
【0041】
接着剤層2の厚さについては、接着する層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、本発明の上記構成を備える電池用包装材料において、優れた成形性と、成形後のカールの抑制をより一層効果的に発揮する観点からは、例えば、1〜10μm程度、好ましくは2〜5μm程度が挙げられる。
【0042】
[バリア層3]
電池用包装材料において、バリア層3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層3は、金属箔、金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着層を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔で形成されている層であることが好ましい。バリア層を構成する金属としては具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。電池用包装材料の製造時に、バリア層3にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H−O、JIS H4160:1994 A8079H−O、JIS H4000:2014 A8021P−O、JIS H4000:2014 A8079P−O)など軟質アルミニウム合金箔により形成することがより好ましい。
【0043】
本発明の電池用包装材料においては、バリア層3の厚さは、75〜85μmという特定の範囲内にある。本発明の電池用包装材料においては、前述の通り、電池用包装材料を構成する積層体の厚さが195μm以下であって、基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが30N以上であり、さらに、バリア層3の厚さがこのような特定の範囲内にあることにより、優れた成形性と、成形後のカールの抑制が効果的に発揮される。
【0044】
バリア層3の厚さとしては、75〜85μmの範囲にあればよいが、成形性の向上と成形カールの抑制をより効果的に発揮する観点からは、好ましくは75〜82μm程度、77〜85μm程度、77〜82μm程度、80〜85μm程度、80〜82μm程度が挙げられる。
【0045】
また、バリア層3は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐酸性皮膜を形成する処理をいう。化成処理としては、例えば、硝酸クロム、フッ化クロム、硫酸クロム、酢酸クロム、蓚酸クロム、重リン酸クロム、クロム酸アセチルアセテート、塩化クロム、硫酸カリウムクロムなどのクロム化合物を用いたクロメート処理;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸アンモニウム、ポリリン酸などのリン酸化合物を用いたリン酸処理;下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体を用いたクロメート処理などが挙げられる。なお、当該アミノ化フェノール重合体において、下記一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位は、1種類単独で含まれていてもよいし、2種類以上の任意の組み合わせであってもよい。
【0046】
【化1】
【0047】
【化2】
【0048】
【化3】
【0049】
【化4】
【0050】
一般式(1)〜(4)中、Xは、水素原子、ヒドロキシ基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、アリル基又はベンジル基を示す。また、R1及びR2は、それぞれ同一又は異なって、ヒドロキシ基、アルキル基、又はヒドロキシアルキル基を示す。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基などの炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。また、X、R1及びR2で示されるヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシメチル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシブチル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基が1個置換された炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖状アルキル基が挙げられる。一般式(1)〜(4)において、X、R1及びR2で示されるアルキル基及びヒドロキシアルキル基は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。一般式(1)〜(4)において、Xは、水素原子、ヒドロキシ基又はヒドロキシアルキル基であることが好ましい。一般式(1)〜(4)で表される繰り返し単位を有するアミノ化フェノール重合体の数平均分子量は、例えば、500〜100万程度であることが好ましく、1000〜2万程度であることがより好ましい。
【0051】
また、バリア層3に耐食性を付与する化成処理方法として、リン酸中に、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化スズなどの金属酸化物や硫酸バリウムの微粒子を分散させたものをコーティングし、150℃以上で焼付け処理を行うことにより、バリア層3の表面に耐酸性皮膜を形成する方法が挙げられる。また、耐酸性皮膜の上には、カチオン性ポリマーを架橋剤で架橋させた樹脂層をさらに形成してもよい。ここで、カチオン性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミンとカルボン酸を有するポリマーからなるイオン高分子錯体、アクリル主骨格に1級アミンをグラフト重合させた1級アミングラフトアクリル樹脂、ポリアリルアミン又はその誘導体、アミノフェノールなどが挙げられる。これらのカチオン性ポリマーとしては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、架橋剤としては、例えば、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、及びオキサゾリン基よりなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基を有する化合物、シランカップリング剤などが挙げられる。これらの架橋剤としては、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、耐酸性皮膜を具体的に設ける方法としては、たとえば、一つの例として、少なくともアルミニウム合金箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面にリン酸クロム塩、リン酸チタン塩、リン酸ジルコニウム塩、リン酸亜鉛塩などのリン酸金属塩及びこれらの金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、リン酸非金属塩及びこれらの非金属塩の混合体を主成分とする処理液(水溶液)、あるいは、これらとアクリル系樹脂ないしフェノール系樹脂ないしウレタン系樹脂などの水系合成樹脂との混合物からなる処理液(水溶液)をロールコート法、グラビア印刷法、浸漬法などの周知の塗工法で塗工することにより、耐酸性皮膜を形成することができる。たとえば、リン酸クロム塩系処理液で処理した場合は、リン酸クロム、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となり、リン酸亜鉛塩系処理液で処理した場合は、リン酸亜鉛水和物、リン酸アルミニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、フッ化アルミニウムなどからなる耐酸性皮膜となる。
【0053】
また、耐酸性皮膜を設ける具体的方法の他の例としては、たとえば、少なくともアルミニウム合金箔の内層側の面を、まず、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法、酸活性化法などの周知の処理方法で脱脂処理を行い、その後脱脂処理面に周知の陽極酸化処理を施すことにより、耐酸性皮膜を形成することができる。
【0054】
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩系、クロム酸系の皮膜が挙げられる。リン酸塩系としては、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシウム、リン酸クロムなどが挙げられ、クロム酸系としては、クロム酸クロムなどが挙げられる。
【0055】
また、耐酸性皮膜の他の一例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物などの耐酸性皮膜を形成することによって、エンボス成形時のアルミニウムと基材層との間のデラミネーション防止、電解質と水分とによる反応で生成するフッ化水素により、アルミニウム表面の溶解、腐食、特にアルミニウムの表面に存在する酸化アルミニウムが溶解、腐食することを防止し、かつ、アルミニウム表面の接着性(濡れ性)を向上させ、ヒートシール時の基材層とアルミニウムとのデラミネーション防止、エンボスタイプにおいてはプレス成形時の基材層とアルミニウムとのデラミネーション防止の効果を示す。耐酸性皮膜を形成する物質のなかでも、フェノール樹脂、フッ化クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成された水溶液をアルミニウム表面に塗布し、乾燥焼付けの処理が良好である。
【0056】
また、耐酸性皮膜は、酸化セリウムと、リン酸又はリン酸塩と、アニオン性ポリマーと、該アニオン性ポリマーを架橋させる架橋剤とを有する層を含み、前記リン酸又はリン酸塩が、前記酸化セリウム100質量部に対して、1〜100質量部程度配合されていてもよい。耐酸性皮膜が、カチオン性ポリマー及び該カチオン性ポリマーを架橋させる架橋剤を有する層をさらに含む多層構造であることが好ましい。
【0057】
さらに、前記アニオン性ポリマーが、ポリ(メタ)アクリル酸又はその塩、あるいは(メタ)アクリル酸又はその塩を主成分とする共重合体であることが好ましい。また、前記架橋剤が、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基、オキサゾリン基のいずれかの官能基を有する化合物とシランカップリング剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0058】
また、前記リン酸又はリン酸塩が、縮合リン酸又は縮合リン酸塩であることが好ましい。
【0059】
化成処理は、1種類の化成処理のみを行ってもよいし、2種類以上の化成処理を組み合わせて行ってもよい。さらに、これらの化成処理は、1種の化合物を単独で使用して行ってもよく、また2種以上の化合物を組み合わせて使用して行ってもよい。化成処理の中でも、クロメート処理や、クロム化合物、リン酸化合物、及びアミノ化フェノール重合体を組み合わせた化成処理などが好ましい。クロム化合物の中でも、クロム酸化合物が好ましい。
【0060】
耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、及びトリアジンチオールのうち少なくとも1種を含むものが挙げられる。また、セリウム化合物を含む耐酸性皮膜も好ましい。セリウム化合物としては、酸化セリウムが好ましい。
【0061】
また、耐酸性皮膜の具体例としては、リン酸塩系皮膜、クロム酸塩系皮膜、フッ化物系皮膜、トリアジンチオール化合物皮膜なども挙げられる。耐酸性皮膜としては、これらのうち1種類であってもよいし、複数種類の組み合わせであってもよい。さらに、耐酸性皮膜としては、アルミニウム合金箔の化成処理面を脱脂処理した後に、リン酸金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液、又はリン酸非金属塩と水系合成樹脂との混合物からなる処理液で形成されたものであってもよい。
【0062】
なお、耐酸性皮膜の組成の分析は、例えば、飛行時間型2次イオン質量分析法を用いて行うことができる。飛行時間型2次イオン質量分析法を用いた耐酸性皮膜の組成の分析により、例えば、Ce+及びCr+の少なくとも一方に由来するピークが検出される。
【0063】
アルミニウム合金箔の表面に、リン、クロム及びセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む耐酸性皮膜を備えていることが好ましい。なお、電池用包装材料のアルミニウム合金箔の表面の耐酸性皮膜中に、リン、クロム及びセリウムからなる群より選択される少なくとも1種の元素が含まれることは、X線光電子分光を用いて確認することができる。具体的には、まず、電池用包装材料において、アルミニウム合金箔に積層されている熱融着性樹脂層、接着剤層などを物理的に剥離する。次に、アルミニウム合金箔を電気炉に入れ、約300℃、約30分間で、アルミニウム合金箔の表面に存在している有機成分を除去する。その後、アルミニウム合金箔の表面のX線光電子分光を用いて、これら元素が含まれることを確認する。
【0064】
化成処理においてバリア層3の表面に形成させる耐酸性皮膜の量については、特に制限されないが、例えば、上記のクロメート処理を行う場合であれば、バリア層3の表面1m2当たり、クロム化合物がクロム換算で0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、リン化合物がリン換算で0.5〜50mg程度、好ましくは1.0〜40mg程度、及びアミノ化フェノール重合体が1〜200mg程度、好ましくは5.0〜150mg程度の割合で含有されていることが望ましい。
【0065】
耐酸性皮膜の厚さとしては、特に制限されないが、皮膜の凝集力や、バリア層3や熱融着樹脂層4との密着力の観点から、好ましくは1nm〜10μm程度、より好ましくは1〜100nm程度、さらに好ましくは1〜50nm程度が挙げられる。なお、耐酸性皮膜の厚さは、透過電子顕微鏡による観察、又は、透過電子顕微鏡による観察と、エネルギー分散型X線分光法もしくは電子線エネルギー損失分光法との組み合わせによって測定することができる。
【0066】
化成処理は、耐酸性皮膜の形成に使用する化合物を含む溶液を、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法、浸漬法などによって、バリア層の表面に塗布した後に、バリア層の温度が70〜200℃程度になるように加熱することにより行われる。また、バリア層に化成処理を施す前に、予めバリア層を、アルカリ浸漬法、電解洗浄法、酸洗浄法、電解酸洗浄法などによる脱脂処理に供してもよい。このように脱脂処理を行うことにより、バリア層の表面の化成処理をより効率的に行うことが可能となる。
【0067】
[熱融着性樹脂層4]
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4は、最内層に該当し、電池の組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して電池素子を密封する層である。
【0068】
熱融着性樹脂層4に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリオレフィン、環状ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン、酸変性環状ポリオレフィンが挙げられる。すなわち、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。熱融着性樹脂層4を構成する樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0069】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)などのポリプロピレン;エチレン−ブテン−プロピレンのターポリマーなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0070】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、ブタジエン、イソプレンなどが挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネンなどの環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエンなどの環状ジエンなどが挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0071】
前記酸変性ポリオレフィンとは、前記ポリオレフィンをカルボン酸などの酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などのカルボン酸又はその無水物が挙げられる。
【0072】
前記酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、α,β−不飽和カルボン酸又はその無水物に代えて共重合することにより、或いは環状ポリオレフィンに対してα,β−不飽和カルボン酸又はその無水物をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。カルボン酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、変性に使用されるカルボン酸としては、前記ポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
【0073】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくはポリプロピレンなどのポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン;さらに好ましくはポリプロピレン、酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0074】
熱融着性樹脂層4は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層4は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上で形成されていてもよい。
【0075】
本発明において、電池用包装材料の成形性を高める観点からは、熱融着性樹脂層の表面には、滑剤が付着していることが好ましい。滑剤としては、特に制限されないが、好ましくはアミド系滑剤が挙げられる。アミド系滑剤の具体例としては、例えば、飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、置換アミド、メチロールアミド、飽和脂肪酸ビスアミド、不飽和脂肪酸ビスアミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸アミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸アミドの具体例としては、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどが挙げられる。置換アミドの具体例としては、N−オレイルパルミチン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミド、N−ステアリルオレイン酸アミド、N−オレイルステアリン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミドなどが挙げられる。また、メチロールアミドの具体例としては、メチロールステアリン酸アミドなどが挙げられる。飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’−ジステアリルセバシン酸アミドなどが挙げられる。不飽和脂肪酸ビスアミドの具体例としては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどが挙げられる。脂肪酸エステルアミドの具体例としては、ステアロアミドエチルステアレートなどが挙げられる。また、芳香族系ビスアミドの具体例としては、m−キシリレンビスステアリン酸アミド、m−キシリレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミドなどが挙げられる。滑剤は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0076】
熱融着性樹脂層4の表面に滑剤が存在する場合、その存在量としては、特に制限されないが、温度24℃、相対湿度60%の環境において、好ましくは約3mg/m2以上、より好ましくは4〜15mg/m2程度、さらに好ましくは5〜14mg/m2程度が挙げられる。
【0077】
熱融着性樹脂層4の中には、滑剤が含まれていてもよい。また、熱融着性樹脂層4の表面に存在する滑剤は、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂に含まれる滑剤を滲出させたものであってもよいし、熱融着性樹脂層4の表面に滑剤を塗布したものであってもよい。
【0078】
また、熱融着性樹脂層4の厚さとしては、熱融着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、本発明の上記構成を備える電池用包装材料において、優れた成形性と、成形後のカールの抑制をより一層効果的に発揮する観点からは、好ましくは50〜70μm程度、50〜65μm程度、55〜70μm程度、55〜65μm程度、60〜70μm程度、60〜65μm程度が挙げられる。
【0079】
高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より一層高いシール強度を発揮する観点から、下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定した場合に、温度差T2を温度差T1で除して得られる値(比T2/T1)が、例えば0.55以上、さらには0.60以上であることがより好ましい。下記の温度差T1,T2の測定内容から理解されるとおり、当該比T2/T1が、上限値である1.0に近い程、熱融着性樹脂層が電解液に接触する前後における融解ピークの開始点(補外融解開始温度)と終了点(補外融解終了温度)の幅の変化が小さいことを意味している(図11の模式図を参照)。すなわち、T2の値は、通常、T1の値以下である。融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅の変化が大きくなる要因としては、熱融着性樹脂層を構成している樹脂に含まれる低分子量の樹脂が、電解液に接触することにより電解液中に溶出し、電解液に接触した後の熱融着性樹脂層の融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅が、電解液に接触する前に比して、小さくなることが挙げられる。融解ピークの補外融解開始温度と補外融解終了温度の幅の変化を小さくするための方法の一つとして、熱融着性樹脂層を構成している樹脂に含まれる低分子量の樹脂の割合を調整する方法が挙げられる。
【0080】
(温度差T1の測定)
JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、上記の各電池用包装材料の熱融着性樹脂層に用いた樹脂について、DSC曲線を得る。得られたDSC曲線から、熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
【0081】
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境で、熱融着性樹脂層に用いた樹脂を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、十分に乾燥させる。次に、JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、乾燥後のポリプロピレンについて、DSC曲線を得る。次に、得られたDSC曲線から、乾燥後の熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【0082】
融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度の測定にあたり、示差走査熱量分析計としては、市販品を用いることができる。また、DSC曲線としては、試験サンプルを−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(1回目)し、200℃で10分間保持した後、降温速度−10℃/分で−50℃まで降温し、−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(2回目)し、200℃で10分間保持し、2回目に200℃まで昇温する際のDSC曲線を用いる。また、温度差T1及び温度差T2を測定する際、それぞれのDSC曲線において、120〜160℃の範囲に現れる融解ピークのうち、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについて解析を行う。ピークが重なって2個以上存在していた場合にも、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについてのみ解析を行う。
【0083】
また、補外融解開始温度は、融解ピーク温度の開始点を意味し、低温(65〜75℃)側のベースラインを高温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの低温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。補外融解終了温度は、融解ピーク温度の終了点を意味し、高温(170℃)側のベースラインを低温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの高温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とする。
【0084】
本発明の電池用包装材料において、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より一層高いシール強度を発揮する観点から、温度差T2を温度差T1で除して得られる値(比T2/T1)としては、例えば0.55以上、好ましくは0.60以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.75以上が挙げられ、好ましい範囲としては、0.55〜1.0程度、0.60〜1.0程度0.70〜1.0程度、0.75〜1.0程度が挙げられる。また、上限は、例えば1.0である。なお、このような比T2/T1に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
【0085】
また、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より一層高いシール強度を発揮する観点から、温度差T2と温度差T1の差の絶対値|T2−T1|としては、例えば約15℃以下、好ましくは約10℃以下、より好ましくは約8℃以下、さらに好ましくは約7.5℃以下が挙げられ、好ましい範囲としては、0〜15℃程度、0〜10℃程度、0〜8℃程度、0〜7.5℃程度、1〜15℃程度、1〜10℃程度、1〜8℃程度、1〜7.5℃程度、2〜15℃程度、2〜10℃程度、2〜8℃程度、2〜7.5℃程度、5〜15℃程度、5〜10℃程度、5〜8℃程度、5〜7.5℃程度が挙げられる。なお、当該差の絶対値|T2−T1|の下限値は、例えば、0℃、1℃、2℃、5℃などである。なお、当該差の絶対値|T2−T1|に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
【0086】
また、温度差T1としては、好ましくは29〜38℃程度、より好ましくは32〜36℃程度が挙げられる。温度差T2としては、好ましくは17〜30℃程度、より好ましくは26〜29℃程度が挙げられる。なお、このような温度差T1,T2に設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層4を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
【0087】
本発明の電池用包装材料において、熱融着性樹脂層4(熱融着性樹脂層4が複数の層により構成されている場合には、最もバリア層3側に存在する層)のバリア層3側の表面の、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.22以下、さらには0.20以下であることが好ましい。本発明においては、120℃における当該対数減衰率ΔEが例えば0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.22以下、さらには0.20以下であることにより、電池用包装材料の成形後のカールが効果的に抑制される。120℃での前記対数減衰率が低い場合、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂の剛性が高くなるといえる。すなわち、熱融着性樹脂層4のバリア層3側の表面の120℃での対数減衰率ΔEが例えば0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.22以下、さらには0.20以下と低いことによって、電池用包装材料の成形時に基材層が収縮する際に、積層体全体が収縮することへの耐力が熱融着性樹脂層4によって高められ、結果として、電池用包装材料の成形後のカールが効果的に抑制されているものと考えられる。
【0088】
剛体振り子測定における120℃での対数減衰率は、120℃という高温環境における樹脂の硬度を表す指標であり、対数減衰率が小さくなるほど樹脂の硬度が高いことを意味している。剛体振り子測定においては、樹脂の温度を低温から高温へ上昇させた時の振り子の減衰率を測定する。剛体振り子測定では、一般に、エッジ部を測定対象物の表面に接触させ、左右方向へ振り子運動させて、測定対象物に振動を付与する。本発明の電池用包装材料においては、120℃という高温環境における対数減衰率が例えば0.50以下、0.40以下、0.30以下、0.22以下、さらには0.20以下という硬い熱融着性樹脂層4をバリア層3側に配置していることにより、電池用包装材料の成形後のカールを効果的に抑制することができる。
【0089】
なお、対数減衰率ΔEは、以下の式によって算出される。
ΔE=[ln(A1/A2)+ln(A2/A3)+・・・ln(An/An+1)]/n
A:振幅
n:波数
【0090】
本発明の電池用包装材料において、成形後のカールをより一層効果的に抑制する観点から、120℃における当該対数減衰率ΔEとしては、例えば0.10〜0.50程度、0.10〜0.40程度、0.10〜0.30程度、0.10〜0.22程度、0.10〜0.20程度、0.10〜0.16程度が挙げられる。なお、当該対数減衰率ΔEに設定するためには、例えば、熱融着性樹脂層4(熱融着性樹脂層4が複数の層により構成されている場合には、最もバリア層3側に存在する層)を構成する樹脂の種類、組成、分子量などを調整する。
【0091】
対数減衰率ΔEの測定においては、市販の剛体振り子型物性試験器を用い、熱融着性樹脂層4に押し当てるエッジ部として円筒型のシリンダエッジ、初期の振幅を0.3degree、30℃から200℃の温度範囲で昇温速度3℃/分の条件で熱融着性樹脂層4に対して剛体振り子物性試験を行う。なお、対数減衰率ΔEを測定する熱融着性樹脂層4については、電池用包装材料を15%塩酸に浸漬して、基材層及びバリア層を溶解させ、熱融着性樹脂層のみとなったサンプルを十分に乾燥させて測定対象とする。
【0092】
また、電池から電池用包装材料を取得して、熱融着性樹脂層4の対数減衰率ΔEを測定することもできる。電池から電池用包装材料を取得して、熱融着性樹脂層4の対数減衰率ΔEを測定する場合、成形によって電池用包装材料が引き伸ばされていない天面部からサンプルを切り出して測定対象とする。
【0093】
熱融着性樹脂層4の対数減衰率ΔEは、例えば、熱融着性樹脂層4を構成している樹脂のメルトマスフローレート(MFR)、分子量、融点、軟化点、分子量分布、結晶化度などにより調整可能である。
【0094】
[接着層5]
本発明の電池用包装材料において、接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4を強固に接着させるために、これらの間に必要に応じて設けられる層である。
【0095】
接着層5は、バリア層3と熱融着性樹脂層4とを接着可能である樹脂によって形成される。接着層5の形成に使用される樹脂としては、その接着機構、接着剤成分の種類などは、接着剤層2で例示した接着剤と同様のものが使用できる。また、接着層5の形成に使用される樹脂としては、前述の熱融着性樹脂層4で例示したポリオレフィン、環状ポリオレフィン、カルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン系樹脂も使用できる。バリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性に優れる観点から、ポリオレフィンとしては、カルボン酸変性ポリオレフィンが好ましく、カルボン酸変性ポリプロピレンが特に好ましい。すなわち、接着層5を構成する樹脂は、ポリオレフィン骨格を含んでいても含んでいなくてもよく、ポリオレフィン骨格を含んでいることが好ましい。接着層5を構成する樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法などにより分析可能であり、分析方法は特に問わない。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0096】
さらに、電池用包装材料の厚さを薄くしつつ、成形後の形状安定性に優れた電池用包装材料とする観点からは、接着層5は、酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。酸変性ポリオレフィンとしては、好ましくは、熱融着性樹脂層4で例示したカルボン酸変性ポリオレフィン、カルボン酸変性環状ポリオレフィンと同じものが例示できる。
【0097】
また、硬化剤としては、酸変性ポリオレフィンを硬化させるものであれば、特に限定されない。硬化剤としては、例えば、エポキシ系硬化剤、多官能イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤などが挙げられる。
【0098】
エポキシ系硬化剤は、少なくとも1つのエポキシ基を有する化合物であれば、特に限定されない。エポキシ系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、変性ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラックグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテルなどのエポキシ樹脂が挙げられる。
【0099】
多官能イソシアネート系硬化剤は、2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であれば、特に限定されない。多官能イソシアネート系硬化剤の具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、これらをポリマー化やヌレート化したもの、これらの混合物や他ポリマーとの共重合物などが挙げられる。
【0100】
カルボジイミド系硬化剤は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を少なくとも1つ有する化合物であれば、特に限定されない。カルボジイミド系硬化剤としては、カルボジイミド基を少なくとも2つ以上有するポリカルボジイミド化合物が好ましい。
【0101】
オキサゾリン系硬化剤は、オキサゾリン骨格を有する化合物であれば、特に限定されない。オキサゾリン系硬化剤としては、具体的には、日本触媒社製のエポクロスシリーズなどが挙げられる。
【0102】
接着層5によるバリア層3と熱融着性樹脂層4との密着性を高めるなどの観点から、硬化剤は、2種類以上の化合物により構成されていてもよい。
【0103】
接着層5を形成する樹脂組成物における硬化剤の含有量は、0.1〜50質量%程度の範囲にあることが好ましく、0.1〜30質量%程度の範囲にあることがより好ましく、0.1〜10質量%程度の範囲にあることがさらに好ましい。
【0104】
接着層5の厚さについては、接着層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、接着剤層2で例示した接着剤を用いる場合であれば、好ましくは1〜10μm程度、より好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。また、熱融着性樹脂層4で例示した樹脂を用いる場合であれば、好ましくは2〜50μm程度、より好ましくは10〜40μm程度が挙げられる。また、酸変性ポリオレフィンと硬化剤との硬化物である場合であれば、好ましくは約30μm以下、より好ましくは0.1〜20μm程度、さらに好ましくは0.5〜5μm程度が挙げられる。なお、接着層5が酸変性ポリオレフィンと硬化剤を含む樹脂組成物の硬化物である場合、当該樹脂組成物を塗布し、加熱などにより硬化させることにより、接着層5を形成することができる。
【0105】
[表面被覆層6]
本発明の電池用包装材料においては、意匠性、耐電解液性、耐擦過性、成形性の向上などを目的として、必要に応じて、基材層1の上(基材層1のバリア層3とは反対側)に、必要に応じて、表面被覆層6を設けてもよい。表面被覆層6は、電池を組み立てた時に、最外層に位置する層である。
【0106】
表面被覆層6は、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などにより形成することができる。表面被覆層6は、これらの中でも、2液硬化型樹脂により形成することが好ましい。表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂としては、例えば、2液硬化型ウレタン樹脂、2液硬化型ポリエステル樹脂、2液硬化型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、表面被覆層6には、添加剤を配合してもよい。
【0107】
添加剤としては、例えば、粒径が0.5nm〜5μm程度の微粒子が挙げられる。添加剤の材質については、特に制限されないが、例えば、金属、金属酸化物、無機物、有機物などが挙げられる。また、添加剤の形状についても、特に制限されないが、例えば、球状、繊維状、板状、不定形、バルーン状などが挙げられる。添加剤として、具体的には、タルク、シリカ、グラファイト、カオリン、モンモリロイド、モンモリロナイト、合成マイカ、ハイドロタルサイト、シリカゲル、ゼオライト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化ネオジウム、酸化アンチモン、酸化チタン、酸化セリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸リチウム、安息香酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルミナ、カーボンブラック、カーボンナノチューブ類、高融点ナイロン、架橋アクリル、架橋スチレン、架橋ポリエチレン、ベンゾグアナミン、金、アルミニウム、銅、ニッケルなどが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの添加剤の中でも、分散安定性やコストなどの観点から、好ましくはシリカ、硫酸バリウム、酸化チタンが挙げられる。また、添加剤には、表面に絶縁処理、高分散性処理などの各種表面処理を施しておいてもよい。
【0108】
表面被覆層中の添加剤の含有量としては、特に制限されないが、好ましくは0.05〜1.0質量%程度、より好ましくは0.1〜0.5質量%程度が挙げられる。
【0109】
表面被覆層6を形成する方法としては、特に制限されないが、例えば、表面被覆層6を形成する2液硬化型樹脂を基材層1の一方の表面に塗布する方法が挙げられる。添加剤を配合する場合には、2液硬化型樹脂に添加剤を添加して混合した後、塗布すればよい。
【0110】
表面被覆層6の厚さとしては、表面被覆層6としての上記の機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、0.5〜10μm程度、好ましくは1〜5μm程度が挙げられる。
【0111】
3.電池用包装材料の製造方法
本発明の電池用包装材料の製造方法については、所定の組成の各層を積層させた積層体が得られる限り、特に制限されない。すなわち、本発明の電池用包装材料の製造方法においては、少なくとも、前述の基材層1、バリア層3、及び熱融着性樹脂層4がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備えている。
【0112】
本発明の電池用包装材料の製造方法の一例としては、以下の通りである。まず、基材層1、接着剤層2、バリア層3が順に積層された積層体(以下、「積層体A」と表記することもある)を形成する。積層体Aの形成は、具体的には、基材層1又は必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3に接着剤層2の形成に使用される接着剤を、グラビアコート法、ロールコート法などの塗布方法で塗布・乾燥した後に、当該バリア層3又は基材層1を積層させて接着剤層2を硬化させるドライラミネート法によって行うことができる。
【0113】
次いで、積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4をこの順になるように積層させる。例えば、(1)積層体Aのバリア層3上に、接着層5及び熱融着性樹脂層4を共押出しすることにより積層する方法(共押出しラミネート法)、(2)別途、接着層5と熱融着性樹脂層4が積層した積層体を形成し、これを積層体Aのバリア層3上にサーマルラミネート法により積層する方法、(3)積層体Aのバリア層3上に、接着層5を形成させるための接着剤を押出し法や溶液コーティングし、高温で乾燥さらには焼き付ける方法などにより積層させ、この接着層5上に予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4をサーマルラミネート法により積層する方法、(4)積層体Aのバリア層3と、予めシート状に製膜した熱融着性樹脂層4との間に、溶融させた接着層5を流し込みながら、接着層5を介して積層体Aと熱融着性樹脂層4を貼り合せる方法(サンドイッチラミネート法)などが挙げられる。
【0114】
表面被覆層6を設ける場合には、基材層1のバリア層3とは反対側の表面に、表面被覆層6を積層する。表面被覆層6は、例えば表面被覆層6を形成する上記の樹脂を基材層1の表面に塗布することに形成することができる。なお、基材層1の表面にバリア層3を積層する工程と、基材層1の表面に表面被覆層6を積層する工程の順番は、特に制限されない。例えば、基材層1の表面に表面被覆層6を形成した後、基材層1の表面被覆層6とは反対側の表面にバリア層3を形成してもよい。
【0115】
上記のようにして、必要に応じて設けられる表面被覆層6/基材層1/必要に応じて設けられる接着剤層2/必要に応じて表面が化成処理されたバリア層3/必要に応じて設けられる接着層5/熱融着性樹脂層4からなる積層体が形成されるが、接着剤層2又は接着層5の接着性を強固にするために、さらに、熱ロール接触式、熱風式、近赤外線式又は遠赤外線式などの加熱処理に供してもよい。このような加熱処理の条件としては、例えば150℃〜250℃で1分間〜5分間が挙げられる。
【0116】
本発明の電池用包装材料において、積層体を構成する各層は、必要に応じて、製膜性、積層化加工、最終製品2次加工(パウチ化、エンボス成形)適性などを向上又は安定化するために、コロナ処理、ブラスト処理、酸化処理、オゾン処理などの表面活性化処理を施していてもよい。
【0117】
4.電池用包装材料の用途
本発明の電池用包装材料は、正極、負極、電解質などの電池素子を密封して収容するための包装体に使用される。すなわち、本発明の電池用包装材料によって形成された包装体中に、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を収容して、電池とすることができる。
【0118】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子を、本発明の電池用包装材料で、前記正極及び負極の各々に接続された金属端子が外側に突出させた状態で、電池素子の周縁にフランジ部(熱融着性樹脂層同士が接触する領域)が形成できるようにして被覆し、前記フランジ部の熱融着性樹脂層同士をヒートシールして密封させることによって、電池用包装材料を使用した電池が提供される。なお、本発明の電池用包装材料により形成された包装体中に電池素子を収容する場合、本発明の電池用包装材料の熱融着性樹脂部分が内側(電池素子と接する面)になるようにして、包装体を形成する。
【0119】
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシターなどが挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【0120】
本発明の電池用包装材料は、優れた成形性を備え、成形後のカールも効果的に抑制されているため、車両用電池などの大型電池に好適に使用することができる。特に本発明の電池用包装材料を好適に適用できる電池としては、電池容量が30Ah以上の大型電池が挙げられる。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0122】
<電池用包装材料の製造>
実施例1−28及び比較例1−150
基材層として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、延伸ナイロン(ONy)フィルム、さらに、ポリエチレンテレフタレート(PET)と延伸ナイロン(ONy)とが厚さ3μmの2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)で接着された積層フィルムを用意した。PETとONyの厚さは、それぞれ、表1〜表7に記載のとおりである。なお、PET又はONyを設けていない場合には、表2〜7において、厚さを「0」と表記した。基材層としてPETとONyの積層フィルムを用いた場合には、ONyをバリア層側に配置した。
【0123】
また、バリア層として、それぞれ、表1〜表7に記載の厚さを有するアルミニウム箔(JIS H4160:1994 A8021H−O)を用意した。次に、アルミニウム箔の一方面に、2液型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート系化合物)を塗布し、バリア層上に接着剤層(厚さ3μm)を形成した。次いで、バリア層上の接着剤層と基材層をドライラミネート法で積層した後、エージング処理を実施することにより、基材層/接着剤層/バリア層の積層体を作製した。アルミニウム箔の両面には、化成処理が施してある。アルミニウム箔の化成処理は、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物、及びリン酸からなる処理液をクロムの塗布量が10mg/m2(乾燥質量)となるように、ロールコート法によりアルミニウム箔の両面に塗布し、焼付けすることにより行った。
【0124】
次に、上記で得られた各積層体のバリア層の上に、熱融着性樹脂層として、表1〜表7に記載の厚さとなるように無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びポリプロピレンを同じ厚みで溶融共押し出しすることにより、バリア層上に熱融着性樹脂層を積層させ、基材層/接着剤層/バリア層/熱融着性樹脂層が順に積層された電池用包装材料を得た。なお、各積層体の基材層側の表面には、温度24℃、相対湿度60%の環境において、存在量が7.0mg/m2となるように、滑剤としてエルカ酸アミドを塗布した。
【0125】
<積層体の突刺し強さの測定>
上記で得られた各電池用包装材料について、それぞれ、JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により、突刺し強さを測定した。突刺しは、基材層側から行った。具体的には、23±2℃、相対湿度(50±5)%の測定環境において、中央に直径15mmの開口部を有する直径115mmの台と押さえ板で試験片を固定し、直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±5mmの速度で突刺し、針が貫通するまでの最大応力を測定した。試験片の数は5個であり、その平均値を求めた。なお、突刺し強さの測定装置としては、イマダ社製のZP−500N(フォースゲージ)とMX2−500N(測定スタンド)を用いた。結果を表1〜表7に示す。
【0126】
<限界成形深さの測定>
上記で得られた各電池用包装材料を長さ(z方向)150mm×幅(x方向)100mmの長方形に裁断して試験サンプルとした。試験サンプルを31.6mm(x方向)×54.5mm(z方向)の矩形状の開口径を有する成形金型(雌型、表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が3.2μmである。コーナーRは2.3、稜線Rは1)と、これに対応した成形金型(雄型、表面は、JIS B 0659−1:2002附属書1(参考) 比較用表面粗さ標準片の表2に規定される、最大高さ粗さ(Rzの呼び値)が1.6μmである。コーナーRは2、稜線Rは1)を用いて、押さえ圧(面圧)0.23MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形(引き込み1段成形)を行った。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に上記試験サンプルを載置して成形を行った。また、雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとした。冷間成形後のサンプルについて、暗室の中にてペンライトで光を当て光の透過によって、バリア層にピンホールやクラックが生じているか否かを確認した。バリア層にピンホール、クラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをAmm、バリア層にピンホールなどが発生した最も浅い成形深さにおいてピンホールなどが発生したサンプルの数をB個とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料の限界成形深さとした。結果を表1〜表7に示す。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/10個)×(10個−B個)
【0127】
<成形カールの測定>
上記で得られた各電池用包装材料を長さ(z方向)200mm×幅(x方向)100mmの長方形に裁断して試験サンプルとした。次に、成形性の評価で用いた成形金型を用い、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するように雌型上に試験サンプルを載置して、成形深さ6mmとなるように試験サンプルを0.23MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。なお、成形深さが6.0mmに達していないものについてはバリア層にピンホールやクラックが生じた状態で成形を止めた。成形を行った位置の詳細は、図5に示される通りである。図5に示されるように、平面視矩形状の成形部Mと電池用包装材料10の端部Pとの最短距離d=122mmかつ、電池用包装材料の両端部との最短距離が34mmとなる位置で成形した。電池用包装材料の凹部が形成されていない箇所の位置Qを基準とし、位置Qから、端部Pまでの垂直方向yの距離の最大値tを、カールしている部分の最大高さ(成形カール(mm))とする。なお、表1〜表7において、成形カールの方向が凹部の方向(垂直方向y1)と同じ(図6の形状)である場合には、成形カールtを正の値として表記し、成形カールの方向が凹部の方向と反対の方向(垂直方向y2)(図7の形状)である場合には、成形カールtを負の値として表記した。例えば、表1の実施例1においては、図6に示されるように、成形カールの方向が凹部の方向(垂直方向y1)と同じであり、成形カールtは6mmであった。これに対して、比較例1においては、図7に示されるように、成形カールの方向が凹部の方向と反対方向(垂直方向y2)であり、成形カールtは−115mmであった。成形カールの方向が凹部の方向と反対の方向(垂直方向y2)(図7の形状)である場合、成形カールtの絶対値が0以上10mm以下であっても、成形後の電池素子を収容して周縁部をヒートシールする工程において、シール位置のずれが生じたり、シール後に皺が発生しやすい。結果を表1〜表7に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
【表2】
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
【表5】
【0133】
【表6】
【0134】
【表7】
【0135】
表1〜表7に示される結果から明らかなとおり、電池用包装材料を構成する積層体の総厚さが195μm以下であり、突刺し強さが30N以上であり、さらにバリア層の厚さが、75〜85μmという特定の範囲内にある実施例1〜28の電池用包装材料では、限界成形深さが10mm以上と大きく、かつ、成形カールも10mm以下であり、成形性に優れ、成形カールも効果的に抑制されていることが分かる。これに対して、これらの要件を充足していない比較例1〜150では、限界成形深さが10mm未満であるか、又は、成形カールが10mmを超えているか、電池用包装材料の厚さが195μmを超えており、いずれも、優れた成形性と、成形カールの効果的な抑制、及び電池の体積エネルギー密度向上が達成されていないことが分かる。
【0136】
<熱融着性樹脂層のバリア層側の表面の対数減衰率ΔEの測定>
上記で得られた実施例14,28の電池用包装材料を、幅(TD:Transverse Direction)15mm×長さ(MD:Machine Direction)150mmの長方形に裁断して試験サンプル(電池用包装材料10)とした。なお、電池用包装材料のMDが、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD)に対応し、電池用包装材料のTDが、アルミニウム合金箔のTDに対応しており、アルミニウム合金箔の圧延方向(RD)は圧延目により判別できる。アルミニウム合金箔の圧延目により電池用包装材料のMDが特定できない場合は、次の方法により特定することができる。電池用包装材料のMDの確認方法として、電池用包装材料の熱融着性樹脂層の断面を電子顕微鏡で観察し海島構造を確認し、熱融着性樹脂層の厚み方向と垂直な方向の島の形状の径の平均が最大であった断面と平行な方向をMDと判断することができる。具体的には、熱融着性樹脂層の長さ方向の断面と、当該長さ方向の断面と平行な方向から10度ずつ角度を変更し、長さ方向の断面と垂直な方向までの各断面(合計10の断面)について、それぞれ、電子顕微鏡写真で観察して海島構造を確認する。次に、各断面において、それぞれ、個々の島の形状を観察する。個々の島の形状について、熱融着性樹脂層の厚み方向とは垂直方向の最左端と、当該垂直方向の最右端とを結ぶ直線距離を径yとする。各断面において、島の形状の当該径yが大きい順に上位20個の径yの平均を算出する。島の形状の当該径yの平均が最も大きかった断面と平行な方向をMDと判断する。剛体振り子測定による対数減衰率ΔEの測定方法を説明するための模式図を図9に示す。剛体振り子型物性試験器(型番:RPT−3000W 株式会社エー・アンド・デイ社製)を用い、振り子30のフレームにはFRB−100、エッジ部の円筒型シリンダエッジ30aにはRBP−060、冷熱ブロック31にはCHB−100、また、振動変位検出器32、錘33を使用し、初期の振幅を0.3degreeとした。冷熱ブロック31上に試験サンプルの測定面(熱融着性樹脂層(酸変性ポリプロピレン))を上方に向けて載置し、測定面上に振り子30付き円筒型シリンダエッジ30aの軸線方向が試験サンプルのMDの方向に直交するように設置した。また、測定中の試験サンプルの浮きや反りを防ぐために、試験サンプルの測定結果に影響のない箇所にテープを貼りつけて冷熱ブロック31上に固定した。円筒型シリンダエッジを、熱融着性樹脂層の表面に接触させた。次に、冷熱ブロック31を用いて昇温速度3℃/分にて30℃から200℃の温度範囲で熱融着性樹脂層の対数減衰率ΔEの測定を行った。試験サンプル(電池用包装材料10)の熱融着性樹脂層の表面温度が120℃となった状態での対数減衰率ΔEを採用した。(一度測定した試験サンプルは使用せず、新たに裁断したものを用いて3回(N=3)測定した平均値を用いた。)熱融着性樹脂層については、上記で得られた実施例14,28の電池用包装材料を15%塩酸に浸漬して、基材層及びアルミニウム箔を溶解させ、熱融着性樹脂層のみとなった試験サンプルを十分に乾燥させて対数減衰率ΔEの測定を行った。120℃における対数減衰率ΔEをそれぞれ表8に示す。(なお、対数減衰率ΔEは、以下の式によって算出される。
ΔE=[ln(A1/A2)+ln(A2/A3)+...+ln(An/An+1)]/n
A:振幅
n:波数
【0137】
【表8】
【0138】
表1及び表8に示される結果から、実施例14,28の電池用包装材料は、アルミニウム合金箔層と、熱融着性樹脂層のバリア層側の表面の剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが、0.50以下であり、成形カールが効果的に抑制されていることが分かる。さらに、実施例28の電池用包装材料は、当該対数減衰率ΔEが0.20以下であり、成形後のカールが特に効果的に抑制されていることが分かる。
【0139】
<融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度の測定>
以下の方法により、上記の実施例14,28の電池用包装材料の熱融着性樹脂層に用いたポリプロピレンについて、融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度を測定し、補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1,T2を測定し、得られた温度差T1,T2の値から、これらの比(T2/T1)及び差の絶対値|T2−T1|を算出した。結果を表9に示す。
【0140】
(温度差T1の測定)
JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、上記の実施例14,28の電池用包装材料の熱融着性樹脂層に用いたポリプロピレンについて、DSC曲線を得た。得られたDSC曲線から、熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定した。
【0141】
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境で、熱融着性樹脂層に用いたポリプロピレンを、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、十分に乾燥させた。次に、JIS K7121:2012の規定に準拠して、示差走査熱量測定(DSC)を用いて、乾燥後のポリプロピレンについて、DSC曲線を得た。次に、得られたDSC曲線から、乾燥後の熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定した。
【0142】
融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度の測定にあたり、示差走査熱量分析計としては、TAインスツルメント社製Q200を用いた。また、DSC曲線としては、試験サンプルを−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(1回目)し、200℃で10分間保持した後、降温速度−10℃分で−50℃まで降温し、−50℃で10分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温(2回目)し、200℃で10分間保持し、2回目に200℃まで昇温する際のDSC曲線を用いた。また、温度差T1及び温度差T2を測定する際、それぞれのDSC曲線において、120〜160℃の範囲に現れる融解ピークのうち、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについて解析を行った。ピークが重なって2個以上存在していた場合にも、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークについてのみ解析を行った。
【0143】
また、補外融解開始温度は、融解ピーク温度の開始点を意味し、低温(65〜75℃)側のベースラインを高温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの低温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とした。補外融解終了温度は、融解ピーク温度の終了点を意味し、高温(170℃)側のベースラインを低温側に延長した直線と、熱エネルギーの入力の差が最大となる融解ピークの高温側の曲線に、勾配が最大になる点で引いた接線との交点の温度とした。
【0144】
<電解液接触前のシール強度の測定>
下記の<電解液接触後のシール強度の測定>において、試験サンプルに電解液を注入しないこと以外は、同様にして引張強度(シール強度)を測定した。熱融着した部分が完全に剥離されるまでの最大引張強度を、電解液接触前のシール強度とする。なお、表9において、電解液接触前のシール強度を、85℃での電解液の接触時間が0hでのシール強度として記載している。
【0145】
<電解液接触後のシール強度の測定>
図10の模式図に示すように、上記で得られた実施例14,28の電池用包装材料を、幅(x方向)100mm×長さ(z方向)200mmの長方形に裁断して試験サンプル(電池用包装材料10)とした(図10a)。試験サンプル(電池用包装材料10)を、z方向の中心で折り返して、熱融着性樹脂層側が重なるようにした(図10b)。次に、折り返した試験サンプルのx方向の両端をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)し、開口部Eを1箇所備える袋状に成形した(図10c)。次に、袋状に成形された試験サンプルの開口部Eから電解液(6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1である溶液)を6g注入し(図10d)、開口部Eの端部をヒートシールにて封止(温度190℃、面圧2.0MPa、時間3秒間)した(図10e)。次に、袋状の試験サンプルの折り返した部分を下にして、温度85℃の環境で所定の保管時間(電解液に接触させる時間であり、0時間、24時間、72時間)静置した。次に、試験サンプルの端部を切断して(図10e)、電解液を全て排出した。次に、熱融着性樹脂層の表面に電解液が付着した状態で、試験サンプルの上下面を金属板20(7mm幅)で挟み、温度190℃、面圧1.0MPa、時間3秒間の条件で熱融着性樹脂層同士を熱融着させた(図10f)。次に、幅(x方向)15mmでのシール強度が測定できるように、試験サンプルを両刃型サンプルカッターで幅15mmに切りとった(図10f、g)。次に、T字剥離となるようにして、引張試験機(島津製作所製、AGS−xplus(商品名))を用い、温度25℃の環境で、引張速度300mm/分、剥離角180°、チャック間距離50mmの条件で熱融着した界面を剥離させて、引張強度(シール強度)を測定した(図8)。熱融着した部分が完全に剥離されるまで(剥離されるまでの距離は、金属板の幅である7mm)の最大引張強度を、電解液接触後のシール強度とした。
【0146】
電解液接触前のシール強度を基準(100%)として、電解液に接触させた後におけるシール強度の保持率(%)を表9に示した。
【0147】
【表9】
【0148】
【表10】
【0149】
表9に示される結果から、実施例14,28の電池用包装材料は、温度差T2を温度差T1で除して得られる値が、0.55以上であり、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって高いシール強度を発揮することが分かる。さらに、実施例28の電池用包装材料は、温度差T2を温度差T1で除して得られる値が、0.60以上であり、高温環境で熱融着性樹脂層に電解液が接触し、熱融着性樹脂層に電解液が付着した状態で熱融着性樹脂層同士が熱融着された場合にも、熱融着によって、より高いシール強度を発揮することが分かる。
【符号の説明】
【0150】
1…基材層
2…接着剤層
3…バリア層
4…熱融着性樹脂層
5…接着層
6…表面被覆層
10…電池用包装材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11

【手続補正書】
【提出日】2019年5月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の厚さが、55〜65μmの範囲内にあり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料。
【請求項2】
前記基材層の厚さが、30〜45μmの範囲内にある、請求項1に記載の電池用包装材料。
【請求項3】
前記熱融着性樹脂層の厚さが、60〜65μmの範囲内にある、請求項1又は2に記載の電池用包装材料。
【請求項4】
前記基材層が、ポリエステルフィルムとポリアミドフィルムとの積層体である、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項5】
下記の測定条件によって測定される限界成形深さが、10mm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
(限界成形深さの測定条件)
長さ150mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをA(mm)、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが発生した最も浅い成形深さにおいて、ピンホールまたはクラックが発生したサンプルの数をB(個)とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料の限界成形深さとする。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/10)×(10−B)
【請求項6】
下記の測定条件によって測定される成形カールが、0mm以上10mm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
(成形カールの測定条件)
長さ200mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPa、成形深さ6mmで冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。成形部Mの位置は、電池用包装材料の長さ方向において、金型によって形成される平面視矩形状の成形部Mと、電池用包装材料の端部Pとの最短距離dが122mmとなり、かつ、電池用包装材料の幅方向において、当該成形部Mと電池用包装材料の両端部との最短距離が34mmとなる位置とする。成形後の電池用包装材料を、成形部の凹部の開口が下向きにして、成形部の凹部が形成されていない箇所の位置Qを基準とし、位置Qから、端部Pまでの垂直方向yの距離の最大値tを、カール(mm)とする。
【請求項7】
下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.55以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【請求項8】
前記熱融着性樹脂層の前記バリア層側の表面の、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項9】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
【請求項10】
少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備える電池用包装材料の製造方法であって、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
前記熱融着性樹脂層の厚さが、55〜65μmの範囲内にあり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料の製造方法。

【手続補正書】
【提出日】2019年9月4日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、バリア層と、熱融着性樹脂層とをこの順に備える積層体から構成されており、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、またはこれらの積層フィルムにより形成されており、
前記バリア層はアルミニウム箔により形成されており、
前記熱融着性樹脂層は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びポリプロピレンにより形成されており、
前記熱融着性樹脂層の厚さが、55〜65μmの範囲内にあり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料。
【請求項2】
前記基材層の厚さが、30〜45μmの範囲内にある、請求項1に記載の電池用包装材料。
【請求項3】
前記熱融着性樹脂層の厚さが、60〜65μmの範囲内にある、請求項1又は2に記載の電池用包装材料。
【請求項4】
前記基材層が、ポリエチレンテレフタレートフィルムと延伸ナイロンフィルムとの積層フィルムである、請求項1〜3のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項5】
下記の測定条件によって測定される限界成形深さが、10mm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の電池用包装材料。
(限界成形深さの測定条件)
長さ150mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプルについて冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。冷間成形後のサンプルについて、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さをA(mm)、アルミニウム合金箔層にピンホールまたはクラックが発生した最も浅い成形深さにおいて、ピンホールまたはクラックが発生したサンプルの数をB(個)とし、以下の式により算出される値を電池用包装材料の限界成形深さとする。
限界成形深さ=Amm+(0.5mm/10)×(10−B)
【請求項6】
下記の測定条件によって測定される成形カールが、0mm以上10mm以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の電池用包装材料。
(成形カールの測定条件)
長さ200mm及び幅100mmの長方形の前記電池用包装材料を試験サンプルとする。このサンプルを長さ55mm及び幅32mmの矩形状の開口径を有する雌型と、これに対応した雄型を用いて、押え面圧0.23MPa、成形深さ6mmで冷間成形を行う。このとき、雄型側に熱融着性樹脂層側が位置するよう、雌型上に前記試験サンプルを載置して成形を行う。雄型及び雌型のクリアランスは、0.3mmとする。成形部Mの位置は、電池用包装材料の長さ方向において、金型によって形成される平面視矩形状の成形部Mと、電池用包装材料の端部Pとの最短距離dが122mmとなり、かつ、電池用包装材料の幅方向において、当該成形部Mと電池用包装材料の両端部との最短距離が34mmとなる位置とする。成形後の電池用包装材料を、成形部の凹部の開口が下向きにして、成形部の凹部が形成されていない箇所の位置Qを基準とし、位置Qから、端部Pまでの垂直方向yの距離の最大値tを、カール(mm)とする。
【請求項7】
下記の方法により、温度差T1と温度差T2を測定し、前記温度差T2を前記温度差T1で除して得られる値が、0.55以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の電池用包装材料。
(温度差T1の測定)
示差走査熱量測定により、前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T1を測定する。
(温度差T2の測定)
温度85℃の環境において、前記熱融着性樹脂層を、6フッ化リン酸リチウムの濃度が1mol/lであり、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとジメチルカーボネートの容積比が1:1:1の溶液である電解液中で72時間静置した後、乾燥させる。示差走査熱量測定により、乾燥後の前記熱融着性樹脂層の融解ピーク温度の補外融解開始温度と補外融解終了温度との温度差T2を測定する。
【請求項8】
前記熱融着性樹脂層の前記バリア層側の表面の、剛体振り子測定における120℃での対数減衰率ΔEが0.50以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の電池用包装材料。
【請求項9】
少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた電池素子が、請求項1〜8のいずれかに記載の電池用包装材料により形成された包装体中に収容されている、電池。
【請求項10】
少なくとも、基材層、バリア層、及び熱融着性樹脂層がこの順となるように積層して積層体を得る工程を備える電池用包装材料の製造方法であって、
前記積層体の厚さが195μm以下であり、
前記基材層は、ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、またはこれらの積層フィルムにより形成されており、
前記バリア層はアルミニウム箔により形成されており、
前記熱融着性樹脂層は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン及びポリプロピレンにより形成されており、
前記熱融着性樹脂層の厚さが、55〜65μmの範囲内にあり、
JIS Z1707:1997の規定に準拠した方法により測定された、前記積層体の前記基材層側から突き刺した場合の突刺し強さが、30N以上であり、
前記バリア層の厚さが、75〜85μmの範囲内にある、電池用包装材料の製造方法。
【国際調査報告】